管理不全空家等に対する行政が行える措置は「勧告」までですが、これが特定空家等と指定されると「命令」が行えるようになります。この命令の措置は、勧告よりも強く厳しい措置となります。
ここでは「命令」の措置内容を詳しくお伝えしていきます。
特定空家等の所有者等への命令
勧告を受けた者が正当な理由なく、その勧告に係る措置をとらなかった場合、その者に対し相当の猶予期限を付けて、その勧告の措置をとることを命ずることができます。
なお、緊急代執行を行う場合はこの命令及び、命令に付随する意見聴取等の手続きを経てる必要はありません。
「正当な理由」とは
この「正当な理由」とは、例えば所有者が有する権原(その行為をすることを正当化する法律上の原因)を超えた措置を内容とする勧告がなされた場合などを想定しており、単に措置を行うために必要な金銭がないことは「正当な理由」にはなりません。
ただし、例えば措置の対象者が所有者ではなく管理者であり、特定空家等の処分を行う権原を有していない場合などは、除去等の措置をとることができない「正当な理由」となります。
相当の猶予期限
相当の猶予期限は勧告と同様で、勧告を受けた者が修繕などの措置を行うことで、その周辺の生活環境への悪影響を改善するのに要するとされる期間のことをいいます。
具体的な期間は、対象となる特定空家等の規模や措置の内容などによって異なりますが、おおよそ物件を整理するための期間や、工事の施工に要する期間を合計したものを標準とすることが考えられています。
所有者へ事前の通知
命令は直ちに下されるわけではなく、事前に措置を命じようとする所有者等またはその代理人に対して通知書が交付されます。
通知書に記載されている内容は以下のとおりです
●命令する措置の内容、及びその原因
●意見書の提出先
●意見書の提出期限
なお、通知書を受け取った者は代理人を選任することができます。
ただし、代理人の資格は書面で証明しなくてはならないこと、代理人が資格を失った場合その旨を直ちに書面で届け出なければならないので注意が必要です。
さらに通知書を受け取った者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し意見書を提出する代わりに公開された場での意見の聴取を要求することができます。
以前の命令内容が変更となる場合、同じ手順で新たに通知書が交付されます。
命じようとする措置の内容
命令しようとする措置の内容は、「勧告に係る措置」と同様の内容となります。具体的に何をどのようすればいいのか、所有者が理解できるように示されます。
措置を命令するに至った事由
特定空家等に対し命令しようとする措置の内容は、どの程度の事由を示さなければならないか、法に特段の定めはありませんが通常は以下のような内容が含まれます。
●行政機関が命令や措置を行う際の条件や基準
●手続きの進行方法や、当事者の権利の保護に関する規定
●当事者が不服申し立てをする場合の手続きや期限に関する規定
●命令や措置が行われる場合の通知方法や期限の定め
この他、特定空家等がどのような状態にあって、どのような悪影響をもたらしているか、その結果どのような措置を命ぜられているのか等、所有者が理解できるように示されます。
命令の実施
①事前の通知書に記載された意見書の提出期限内に、意見書の提出がされなかった場合
②事前の通知書の交付を受けた日から、5日以内に意見聴取の要求がなかった場合
③意見書の提出、または意見聴取を経てもなお命令措置が不当でないとされた場合
これらが認められた場合は、措置の命令が行われます。
命令はその内容を所有者等に正確に伝えるため、書面で行われます。
さらに措置の内容が、特定空家等の全部の除去(解体)で、勧告で動産等に対する措置を含めている場合は命令書によって以下の内容が伝えられます。
●対象となる特定空家等の内部、またはその敷地にある動産等においては措置の期限までに運び出し、適切な処分を行うこと
●特定空家等の除去(解体)によって発生する動産等については、措置の期限までに関係法令に従って適切に処分を行うこと
これらの内容が明記されています。
また、この命令に対し不服がある場合は、市町村長に審査請求を行うことができます。
●処分につき不服申し立てができる旨
●不服申し立てをする行政庁
●不服申し立てをすることができる期間
これらの内容を書面で明記され伝えられます。
注!!命令に違反した者は、50万円以下の過料に処されます。
上記でもお伝えしている通り、「命令」に違反した場合50万円以下の過料に処されます。
こういったことから、出来ることなら命令を受ける前の段階で問題を解決するのが得策ですが、命令の通知書が交付されたら先ずはしっかり目を通し内容を確認し、分からないこと疑問に感じる点があれば空き家のある役所に相談してみることをおすすめします。