特定空家等に対する措置の一つとして代執行がありますが、必要な措置を命じたのにも関わらず、その措置に応じなかったなどの要件を満たさなかったものに対して行われる措置です。
代執行とは別に「略式代執行」という措置がありますが、ここではその略式代執行についてお伝えしていきます。
略式代執行
必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくて命令対象者を確知することができないときは、略式代執行が行われます。これは、過失がなくて助言または指導及び、勧告が行われるべき者を確知することができないため、命令を行うことができない場合も含まれます。
「過失がなくて」「確知することができない」とは?
「過失がなくて」とは、市町村長がその職務行為において、行動や行為に過失がなく、注意義務を実行したことを意味します。また「確知することができない」とは、措置を命ぜられる者(所有者など)の氏名及び住所を知りうることができない場合、または氏名を知りえても住所を知りうることができない場合のことをいいます。
動産等の取扱い
略式代執行を行う措置の内容が、所有者不明の特定空家等の全部の除去(解体)で、動産等に対する措置を含める場合は、事前に以下の内容が明記されたものが送られます。
●対象となる特定空家等の内部、または敷地にある動産等については、実行の期限または代執行をする時期の開始日までに運び出し、適切に処分などをすること
●特定空家等の除去により発生した動産等については、関係法令に従って適切に処理すること
代執行により発生した廃棄物や危険が生ずるおそれのある動産等で所有者が引き取らない場合、関係法令に従って適切に処理されます。
費用の徴収
所有者が特定できなかった際に行われるのが略式代執行です。
その場合、かかった費用は財政管理制度で補填されますが、所有者が後で判明したときなどの費用の徴収については、代執行と同様で行政が所有者から徴収します。
費用について行政が所有者に対して有する請求権は、代執行法に基づく請求権で所有者が徴収される金額は代執行の手数料ではなく、実際に代執行に要した費用となります。
したがって、作業員の賃金、請負人に対する報酬、資材費、第三者に支払われる補償金などは含まれますが、義務違反の確認のために要した調査費などは含まれません。
また、略式代執行では行政が財政管理人の制度を使い土地の取得・売却などが行え、それで得た金額を略式代執行を行った費用にすることができます。
費用の徴収は、代執行法の規定により代執行の終了後に「実際に要した費用の額」と「納期日」が定められた納付命令書によって請求されます。
災害その他、非常の場合
災害その他非常の場合、特定空家等が保安上著しく危険な状態にあり除去、修繕、立木竹の伐採その他、周辺の生活環境の保全を図るため緊急の措置をとる必要があります。その際、本来なら必要とする一定の手続きを経てることなく緊急代執行として行われます。
緊急代執行を行うことが想定される具体的なケース
ケース①災害が発生しようとしている時、災害により特定空家等の屋根が飛散するおそれがあるため、緊急に修繕する必要があるケース
ケース②災害の発生後、特定空家等の柱や外壁などが大きく破損し、その倒壊など危険性が見込まれるため、緊急に除去を行い安全を確保する必要があるケース
ケース③災害発生の有無を問わず、特定空家等の傾きなどが著しく、緊急に除去を行い安全を確保する必要があるケース
以上のことなどが想定されるケースになります。
略式代執行は所有者が特定できなかったときに行われる措置で行政がかかった費用は補填しますが、所有者が特定でき次第、費用は所有者から徴収します。
これは代執行同様、支払いを拒否したり、全額支払うことができなければ、所有者は財産・給与が差し押さえられますし、自己破産したとしても支払い義務が消えることはありません。